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『針金のはなし ほんとうの部屋』02/13/2014/04255 [日刊忘れ女たち]

P2120293.jpg
19:32:23 Galerie Tokyo Humanité 02/12/2014






   針金のはなし ほんとうの部屋




ふすまは眠っている
ふすまには書が貼られてある
あたしは起きていた
ここはほんとうの部屋なのだ

ほんとうの部屋で生まれて
ほんとうのあなたをつれて来た
なんだか胸が痛い
チャアリイの気まぐれにつきあって
バスに乗って海岸線の風にあたったからかな

このふすまのデザインはだれの趣味?
黒い漢字がいっぱいで
四方はすべて開け放たれる
壁なのか扉なのかが分からない
ほんとうの家のほんとうの部屋で
あたしはまるで東北アリスになったよう

あの岬の先に鳥たちがきいきいと鳴きながら落ちてゆく
水面を覆う黒い虹のオイルのように
ため息またため息のあなた
愛のレッスンはもう終わりなの
じゃああたしは姉さんの部屋に行ってくる
蛍光の無菌の廊下をすこしばかり抜けて

姉さんは待っていてこゝろと背中をさすってくれる
あなたについてあたしが説明したことが
青く霞んだ大陸の名前であるのか
こゝろはほんとうの部屋の古い家具のなか
「よし」なんて思って立ち上がったりは
けっしてしない

一本のねじ切れない針金が
いつの間にか
ほんとうのあなたに投げられた
この囚われの暗い家具たちがあたしに屈伸を誘う
いつの間にか
一輪の乾燥した薔薇の黄色が眼をこする
あたしはずっと起きていたのだよ

ほんとうのあなたは
いつまで眼をつむっているのか
翌朝チャアリイは
あたしたちのコトバのみなもと
歩こうとしている無数の黒い動作
その無限のふすまをあたしに開けさせた
黒い動作は飛び立った

板の間に眠る眼が触る/触らない
引き出しの重い突起が陰る/陰らない
東京に電話をしなきゃと云って
その振りをする
なかなか短い時間内では巧くゆかないみたいだけれど
半身が汗ばんでくるまでやっているのでほっておいた

あたしのからだには致命的な緑色の傷があり
あたしのこゝろにはほんとうのあなたがいた
あなたの顎の短いひげや
早朝の歩道橋のようにあたしは楽しんでいた
そのはずだった

鳥たちはそこを渡ってくるのだ
ふすまから飛び立ったほんとうの動作だった
あなたには聴こえるのかな
あいつらの呼ぶ聲が
ほんとうのからだへと渦巻く応答に
一本の針金が絡んでくる微かなうねりが








  *第1052回詩人の聲で朗唱した『針金のはなし』(2000年詩集「管(くだ)」より)を改作した。


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